“之(こ)” の例文
坂(さか)の上(うへ)の煙草屋(たばこや)にて北八(きたはち)嗜(たし)む處(ところ)のパイレートを購(あがな)ふ。勿論(もちろん)身錢(みぜに)なり。此(こ)の舶來(はくらい)煙草(たばこ)此邊(このへん)には未(いま)だ之(こ)れあり。但(たゞ)し濕(しめ)つて味(あじはひ)可(か)ならず。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
之(こ)れ等は先生が大学内で教えられた事だが、先生には大学では無論又東京市内の各処で進化論の通俗講演を致されたものである。
之(こ)れ等は先生が大学内で教えられた事だが、先生には大学では無論又東京市内の各処で進化論の通俗講演を致されたものである。
又、文学は無類飛切(とびきり)の好い職業で、人生にとって之(こ)れ程意味あり、価値ある職業はないと云う人があっても、又決して喜ぶには当らない。
之(こ)れ位の事理の分らない父ではない。が、兄が突然家出して、さなきだに淋しい今、自分を手離して、他家(よそ)へやるだらうか。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
孝助は懐剣を受取り、血を拭い、敵を討って立帰り、お母様に御覧に入れたいが、此の分では之(こ)れがお顔の見納めだろうと、心の中(うち)で念仏を唱え
と、彼は口の内でこんな事を云って、水溜(みずたま)りを飛越えたりして居った。それでも之(こ)れは愉快な遊戯には相違なかった。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
人生(じんせい)の解悟(かいご)に向(むか)つて居(を)る自由(じいう)なる深(ふか)き思想(しさう)と、此(こ)の世(よ)の愚(おろか)なる騷(さわぎ)に對(たい)する全然(ぜん/\)の輕蔑(けいべつ)、是(こ)れ即(すなは)ち人間(にんげん)の之(こ)れ以上(いじやう)のものを未甞(いまだかつ)て知(し)らぬ最大幸福(さいだいかうふく)です。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
茲(ここ)に源空(げんくう)(法然上人)安元元年より浄土門を起す、老少ことごとく稼業を捨て、あまつさえ法外科五十余、之(こ)れに依って、自今、浄土念仏禁止せらる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
... 受け譬(たと)えば大樹の衆鳥之(こ)れに集ればすなわち枯折の患(わずらい)有るが如(ごと)く」また「世間に縛著(ばくちゃく)」せられて「譬えば老象の泥(どろ)に溺(おぼ)れて自ら出(い)ずる事能(あた)わざるが如く」
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
さりながら人気(じんき)の奴隷(どれい)となるも畢竟(ひつきやう)は俗物(ぞくぶつ)済度(さいど)といふ殊勝(しゆしよう)らしき奥(おく)の手(て)があれば強(あなが)ち無用(むよう)と呼(よ)ばゝるにあらず、却(かへつ)て之(こ)れ中々(なか/\)の大事(だいじ)決(けつ)して等閑(なほざり)にしがたし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
そのSH氏(し)がしばらくすると、立(た)つて彼方(あなた)の卓(たく)の前(まえ)に立(た)つて、和服姿(わふくすがた)の東洋人(とうようじん)らしい憂鬱(ゆううつ)な恥(はじ)らひの表情(へうぜう)で、自作(じさく)の詩(し)を謳(うた)ひだした。皆(みな)が之(こ)れに耳(みゝ)傾(かたむ)けた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
人の世の言葉や、思想は、其(そ)の神秘的、具象的事相の万一をだに彷彿(はうふつ)せしめがたき概あるにあらずや。吾れ之(こ)れを思うて、幾たびか躊躇(ちうちよ)し、幾たびか沮喪(そさう)せり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
若(も)し之(これ)に説(と)くに厚利(こうり)を以(もつ)てせば、則(すなは)ち陰(ひそか)に其言(そのげん)を用(もち)ひて顯(あらは)に其身(そのみ)を棄(す)てん。此(これ)を之(こ)れ知(し)らざる可(べ)からざるなり。夫(そ)れ事(こと)は密(みつ)を以(もつ)て成(な)り、語(ご)は泄(も)るるを以(もつ)て敗(やぶ)る。
両君が決闘するに到る迄の経過は以上の如くであるが、決闘沙汰(ざた)の伝はるに従つて周囲の騒ぎが大きくなり、之(こ)れに対する名士の批評が多く新聞紙上に発表された。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
世の貴婦人達の羨(うらや)む珍品である、之(こ)れを三人の娘の内、この年の暮に最も勇ましい振舞をしたものに与えると云う、然(しか)し年の暮と云えば、今日(きょう)は十二月三十一日の夜
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
身體中が輕くしびれるやうな感じもする。之(こ)れつきりで女を手放してしまつて、それからどうなることであらうと云ふことは、いくら考へても考へても判斷がつかない。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
之(こ)れが西沢に相違あるまいと断定して、不安と期待とに騒ぐ胸を押し鎮めながら、落ち口の大きな岩を蹈み越えて、其方へと足を向けた。此処は黒部川の東沢と似かよっている。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
作法宜(よろ)シカラザル儀之(こ)レ有ル段相聞エ候、以後右ノ様子ノ族(やから)、之レ有ルニ於テハ、急度(きっと)、御吟味ヲ遂ゲラルベキ旨、仰セ出サレ候、向後、相慎シミ、作法宜シキ様ニ仕(つかまつ)ルベキ旨
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
批評家は之(これ)を読んで嘲笑し、読者は呆(あき)れる。愚作家その襤褸(らんる)の上に、更に一篇の醜作を附加し得た、というわけである。へまより出でて、へまに入るとは、まさに之(こ)の謂(い)いである。
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
地所の事は島原(しまばら)藩と福澤と直談(じきだん)すべき性質のものでないから御返答は致さぬ、一切(いっさい)万事君夫(そ)れ之(こ)を東京府に聞けと云(い)う調子に構えて居て、六(むず)かしい談判も立消になったのは難有(ありがた)い。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
併し誰一人之(こ)れに答えて批判の口を開くものもなかった。そこには、ただ薄気味悪くチロチロと瞬(またた)く蝋燭の焔に照らし出された、七人の上気した顔が、微動さえしないで並んでいた。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一輛(りょう)の馬車を認め目科は之(こ)れを呼留(よびとゞ)めて先(ま)ず余に乗らしめ馭者(ぎょしゃ)には「出来るだけ早く遣(や)れ、バチグノールのレクルース街(まち)三十九番館だ」と告げ其身も続て飛乗りつ只管(ひたすら)馬(うま)を急(せか)し立(たて)たり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
地方公共團體(ちほうこうきようだんたい)の財政(ざいせい)も亦(また)斯(かく)の如(ごと)きものである、而(しか)して國民(こくみん)はどうであるかと云(い)ふと、自己(じこ)の立(た)つて居(ゐ)る經濟状態(けいざいじやうたい)に對(たい)する自覺(じかく)がないのである、さう考(かんが)へて見(み)ると之(こ)れを個人(こじん)に譬(たと)へて云(い)へば
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
吉原町に『ままごと』といふ音信物(いんしんもの)を調へる家ありし由。之(こ)れは五尺程の押入小棚様の物出来、その中に飲食物、吸物、さしみ、口取、その外種々の種料より庖丁、爼板(まないた)までも仕込みあり。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ヒポコンデリア之(こ)れいかなる病(やまい)ぞ。虚弱(きよじやく)なる人(ひと)のみ之(これ)を病(や)むべきか、健全(けんぜん)なる人(ひと)之(これ)を病(や)む能(あた)はざるか、無學(むがく)之(これ)を病(や)まず却(かへ)つて學問(がくもん)之(これ)を引由(いんゆう)し、無知(むち)之(これ)を病(や)まず、知識(ちしき)あるもの之(これ)を病(や)む事(こと)多(おほ)し。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
釋迦佛は誕生したまひて七歩し、口を自(みづから)開(ひら)いて、天上天下唯我獨尊(てんじやうてんかゆゐがどくそん)、三界皆苦我當度(がいかいぐがたうど)。之(こ)の十六字を唱(とな)へ給ふ。今の月滿御前は、うまれ給ひてうぶごゑ(初聲)に南無妙法蓮華經と唱へ給ふ歟。
景子は此の話を宮坂にしながら塀に沿って進むと道は頑固な丈の高い鉄柵に突き当り左へ屈曲する。其処(そこ)で景子は其の鉄柵の中の別荘風の建物を指して之(こ)れがガルスワーシーの家だと宮坂に告げた。
ガルスワーシーの家 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
忌(い)む今や開花(かいくわ)の時節(じせつ)とて打續たる日和(ひより)なれば上野隅田(すみだ)も人もや出(いで)ん然(さす)れば彼所(かしこ)は打ち水爲可(なすべ)き者もあらざれば塵芥(ほこり)は立て風吹ば眼(まなこ)に入て目の毒なり又櫻は赤(あか)き樣に見ゆれど素(もと)之(こ)れ白き物なれば散行(ちりゆ)く樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
エーイオニュウス生める息、王レーソスは之(こ)を率ゆ。 435
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
「幾歳休官鬢有霜。冷然洗尽熱心腸。」〔幾歳カ官ヲ休メテ鬢ニ霜有リ/冷然トシテ洗ヒ尽ス熱心腸〕また「梁門伝法有之子。昨住玉池今小湖。」〔梁門法ヲ伝フ之(こ)ノ子有リ/昨ハ玉池ニ住ミ今ハ小湖〕等の語を
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
之(こ)れ、次平(つぐへい)、枝ぶりよきをえらんで差し上げなさい
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
おお君達が求めつつあったものは之(こ)れだ
之(こ)れを耻(は)ぢずば何(なに)を耻(は)づ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
之(こ)れ位の事理の分らない父ではない。が、兄が突然家出して、さなきだに淋しい今、自分を手離して、他家(よそ)へやるだろうか。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何でも是は大名旗下(はたもと)の中(うち)に謀叛(むほん)之(こ)れ有る者、お家を覆(くつがえ)さんとする者が、毒酒を試しに来たに相違ないと云うので、女房に其の武家の顔を知って居(お)るかと尋ねると
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
漫然国民性を描けといふ、而(しか)も其の意義其の根拠を繹(たづ)ね来たれば頗る漠(ばく)たるものあり。之(こ)れを解して
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
処(ところ)は英国(えいこく)の或(あ)る海岸に、一軒の立派な家がある、之(こ)れは老貴族松浪(まつなみ)伯爵の別荘で、伯爵は極(ご)く愉快な人物、それに三人の娘があって、いずれも絶世の美人と評判が高い。
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
之(こ)れ丈(だけ)の事を云ひ盡すのに、何にも泣かずに云つてしまつたことが不思議のやうに思はれた。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
此方(こちら)は自分のお友達よと云うて私に紹介され、サー之(こ)れからハッチェリーへ案内を致しましょうと云われて、行ったが、此可憐の娘さんが、先生の仲好しの御友達であったのだ。
此方(こちら)は自分のお友達よと云うて私に紹介され、サー之(こ)れからハッチェリーへ案内を致しましょうと云われて、行ったが、此可憐の娘さんが、先生の仲好しの御友達であったのだ。
御都合之(こ)れ有り、尾州領木曾山林、三カ年間公儀へ借り置く旨(むね)の申渡しがありますと、鈴木千七郎殿それに答えて申さるるには、仰せの趣、たしかに承知致しました、しかし、私方にもこの際
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
耳には音を聞き、目には物を睹(み)る、之(こ)れ快楽を願欲するの最始なり。
寝返りして目の開(ひら)きし瞬間に我(わ)が思ひしは之(こ)れにて候(さふら)ひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
之(こ)を水中に投げ入れて廣き道路を造り上ぐ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
之(こ)れを聞いてゐる瑠璃子も、身体中が、猛火の中に入つたやうに、烈しい憤怒のために燃え狂ふのを感じた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
浅草駒形(こまかた)に小さい家(うち)だが明家(あきや)がありましたから之(こ)れを借受け、造作をして袋物屋の見世を出しました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
之(こ)れは海上法(かいじやうほふ)に從(したが)つて、船(ふね)の將(まさ)に他船(たせん)に追越(おひこ)されんとする時(とき)に表示(へうし)する夜間信號(やかんしんがう)である。
汝今なほ之(こ)を止めず今なほ衆を警めよ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
父は、のたうつように、椅子(いす)の中で、身を悶(もだ)えた。之(こ)れを聞いている瑠璃子も、身体中(からだじゅう)が、猛火の中に入ったように、烈(はげ)しい憤怒(ふんぬ)のために燃え狂うのを感じた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)