七日なぬか)” の例文
羅馬ロオマ七日なぬか、ナポリとポンペイに二日ふつかと云ふ駆歩かけあしの旅をして伊太利イタリイから帰つて見ると、予が巴里パリイとゞまる時日は残りすくなくなつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
五日、七日なぬか二夜ふたよ、三夜、観音様の前にじっとしていますうちに、そういえば、今時、天狗てんぐ※々ひひも居まいし、第一けもの臭気においがしません。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は先ず夜鴉の城主の武士道にそむける罪を数えて一門の面目を保つ為めに七日なぬかの夜を期して、一挙にその城をほふれと叫んだ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんでも財布せえふにやまあだるよ、七日なぬかばかりはたらえてそれでも二りやうのこつたかんな、そんでまたはず前借さきがりすこししてたんだ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
毎日七日なぬかの間市川へ通って、民子の墓の周囲には野菊が一面に植えられた。そのくる日に僕は十分母の精神の休まる様に自分の心持を話して、決然学校へ出た。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かれ七日なぬかの後に、その后の御櫛みぐし海邊うみべたに依りき。すなはちその櫛を取りて、御陵みはかを作りて治め置きき一三
今月ももう七日なぬかとすると、来月号の締切り日は——弔辞ちょうじなどを書いている場合ではない。昼夜兼行に勉強しても、元来仕事に手間てまのかかる彼には出来上るかどうか疑問である。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ようやく事済んで、葬りも済んで、今日は七日なぬかでお寺様へ婆ア様達をほじって御馳走するてえので、久し振で米の飯が食えると云って悦んできやしッけ、法蔵寺ほうぞうじ様へ葬りに成っただ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
別ち得ばよし、別ち得ずんば国王よく聞け、汝を亡ぼし、汝の国をも我が神力じんりきもて滅すべし、七日なぬかの間にこの棄老をばほろぼすべきぞ、と厳然としてげければ、王は大きに驚きおそ
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
春雨はるさめころもいたとほらめや七日なぬからば七夜ななよじとや 〔巻十・一九一七〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
惜くもなき命は有りさふらふものにて、はやそれより七日なぬか相成候あひなりさふらへども、なほ日毎ひごとに心地くるしく相成候やうに覚え候のみにて、今以つて此世このよを去らず候へば、未練の程のおんつもらせもぞかしと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
父はこの月の七日なぬか、春雨さむきあした逝水せいすい落花のあわれを示し給いて、おなじく九日の曇れる朝、季叔すえのおじの墓碑と相隣れるところとこしなえに住むべき家と定めたまいつ。数うれば早し、きょうはその二七日ふたなぬかなり。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……弥生やよひも末の七日なぬか明ほのゝ空朧々ろうろうとして月は在明ありあけにて光を
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
きいでて今日けふしも七日なぬか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
これを眺めてもう七日なぬか
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
七日なぬかすぎにしそのあした
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
医者は神経衰弱だというそうですが、不眠性にかかって、三日も四日も、七日なぬかばかり一目もおやすみなさらない事がある。悩みが一通ひととおりじゃない。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし拘泥の苦痛は一日で済む苦痛を五日いつか七日なぬかに延長する苦痛である。いらざる苦痛である。避けなければならぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにころこん七日なぬかからもたねばわかないやうな藍瓶あゐがめそめられたので、いま普通ふつう反物たんもののやうなみづちないかとおもへばめるといふのではなく
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「この国の物じゃない。海の向うにいる玉造たまつくりが、七日なぬか七晩ななばん磨いたと云う玉だ。」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
川は二三ちやうの幅のあるのも一けんけん流れも皆氷つて居る。つもつた雪も其処そこだけ解けずにあるから、盛上つて痩せた人の静脈せいみやくの様である。七日なぬか目にまた一人の露西亜ロシア女が私の室の客になつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それにまたお宅の嬢様も御逝去おなくなりと承りましたがさぞ御愁傷で、七日なぬかの朝築地の波除杭なみよけぐいの処へ土左衛門が揚ったと云うので、わたしも思わずお筆の死骸と存じまして跣足はだしで箸と茶碗を持って駈出す様な事で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
七日なぬかにてやすりに削り取られ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
三日みつかつゞき、五日いつか七日なぬかつゞいて、ひるがへんで、まどにも欄干らんかんにも、あたゝかなゆきりかゝる風情ふぜいせたのである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鮮血を日にさらして、七日なぬかの間ごとにその変化を葉裏に印して、注意なく一枚のなかに畳み込めたら、こんな色になるだろうと高柳君はさっきからながめていた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七日なぬかの月が細細ほそほそ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
浮舟さんが燗部屋かんべやさがっていて、七日なぬかばかり腰が立たねえでさ、夏のこッた、湯へへえっちゃあ不可いけねえと固く留められていたのを、悪汗わるあせひどいといって
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今から七日なぬか過ぎたあとなら……」と叢中の蛇は不意を打れてやむを得ず首をもたげかかる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
南部の才浦さいうらと云ふところで、七日なぬかばかり風待かざまちをして居た内に、長八ちょうはちと云ふ若い男が、船宿ふなやど小宿こやどの娘と馴染なじんで、明日あす出帆しゅっぱん、と云ふ前の晩、手に手を取つて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
七日なぬかせまる戦は一日の命を縮めて愈六日となった。ウィリアムはシーワルドの勧むるままにクララへの手紙をしたためる。心がくのと、わきが騒がしいので思う事の万分まんぶ一も書けぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
南部なんぶ才浦さいうらところで、七日なぬかばかり風待かざまちをしてうちに、長八ちやうはちわかをとこが、船宿ふなやど小宿こやどむすめ馴染なじんで、明日あす出帆しゆつぱん、とまへばんつて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから二三にちして、たしか七日なぬか夕方ゆふがたに、またれい坂井さかゐ下女げぢよて、もし御閑おひまならうぞ御話おはなしにと、叮嚀ていねい主人しゆじんめいつたへた。宗助そうすけ御米およね洋燈らんぷけて丁度ちやうど晩食ばんめしはじめたところであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もうわたしところだつたの。またわらふでせうけれども、七日なぬかばかりなんにもしほのものはいたゞかないんですもの、うやつておかゝりたいとおもつて、煙草たばこつてたんですよ。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから二三日して、たしか七日なぬかの夕方に、また例の坂井の下女が来て、もし御閑おひまならどうぞ御話にと、叮嚀ていねいに主人の命を伝えた。宗助と御米は洋灯ランプけてちょうど晩食ばんめしを始めたところであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに歩行あるかせられるのに弱って、駄々をこねますのを(七日なぬかまいり、いが餅七つ。)と、すかされるので、(七日まいり、いが餅七つ。)と、唄に唄って、道草に、しい
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七日なぬか立っても二十日はつか立っても一枚も書かない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七日なぬか目の朝、ようようのことで抱主かかえぬしから半日のいとまを許され、再び母親を小石川の荒屋あばらやに見舞うと、三日が間、夜も昼も差込み通し、鳩尾みずおちの処へぐッと上げた握掌にぎりこぶしほどのものが
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでもなか/\捗取はかどらず、七日なぬかつたので、あとのこつて附添つきそつて兄者人あにじやひと丁度ちやうど苅入かりいれで、此節このせつが八ほんしいほどいそがしい、お天気てんき模様もやうあめのやう、長雨ながあめにでもなりますと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
冬分ふゆぶん往々わう/\敦賀つるがからふねが、其處そこ金石かないはながら、端舟はしけ便べんがないために、五日いつか七日なぬかたゞよひつゝ、はて佐渡さどしま吹放ふきはなたれたり、思切おもひきつて、もとの敦賀つるが逆戻ぎやくもどりすることさへあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
火沙汰ひざたの前兆である、といったのが、七日なぬか目の夜中に不幸にして的中した事と。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの、そのね、谷中へ願掛けをした、満願、七日なぬか目よ、……一七日いちしちにちなんですもの。いつもお参りをして帰りがけに、しらしらと夜の明ける時間なのが、その朝は、まだ真暗まっくらだったんですとさ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでもなかなか捗取はかどらず、七日なぬかも経ったので、あとに残って附添っていた兄者人あにじゃびとが、ちょうど刈入で、この節は手が八本も欲しいほどいそがしい、お天気模様も雨のよう、長雨にでもなりますと
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
処が、庭はじとじとしている。秋立って七日なぬかあまりも過ぎたから、夜露も深い。……人の出あしはめなかったが、日暮方、町には薄い夕立があった、それがこの辺はどしゃ降りに降ったと言う。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一車は七日なぬか逗留した。——今夜立って帰京する……既に寝台車も調ととのえた。荷造りも昨夜ゆうべかたづけた。ゆっくりと朝餉あさげを済まして、もう一度、水の姿、山のすがたを見に出よう。さかり場を抜けながら。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七日なぬかってちょうど橘之助が命日のことであった。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度ちやうど七日なぬかめのあさは、ねずみいそいでた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この七日なぬかばかり前だそうだ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)