黎明よあけ)” の例文
東の空が明るくなって黎明よあけが近くなっておりました。怪物は張を抱いて穴の外へ出ました。片手には弓と四五本の矢を持っておりました。
人蔘の精 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まず言う「汝生まれし日より以来このかたあしたに向いて命を下せし事ありや、また黎明よあけにその所を知らしめこれをして地のふちとらえて悪き者を地の上より振落ふりおとさしめたりしや」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
うつくしく且つ嚴かであつた黎明よあけの太陽を
愛の来復、黎明よあけの凱旋
黎明よあけだ!
ところどころ雨雲の切れた黎明よあけの空に、うすい星の光があった。主翁はんと云っても黎明であると思って嬉しかった。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黎明よあけからのはげしい勞働によつて
女は毎晩のように喬生のもとへ来て黎明よあけになって帰って往った。喬生の家と壁一つを境にして老人が住んでいた。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ひろい黎明よあけの畠にとびだし
閽者もんばんは児を抱いた若い女の来たことを取りついだ。南は逢わなかった。南はその夜門の外で女と児の啼く声を徹宵よっぴて聞いたが、黎明よあけごろからぱったり聞えなくなった。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
気がくと老人のうなるような怒る声が聞えていたのです、もう黎明よあけで東のほうが白くなっているのです、私はそれから家に帰ったのですが、むすめのことが気になるし
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たきつけられた女はそのおそく石川のもとへ来たが、来るなり石川にってかかった。石川はやっと女をなだめて、ともにれて往くことにして黎明よあけを待って出発した。
唖娘 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女はとうとう一泊して黎明よあけになって帰って往った。喬生はもう亡くなった女房のことは忘れてしまって夜の来るのを待っていた。夜になると女は少女をれてやって来た。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
経を読んでる間は近寄れないが、もう追っつけ黎明よあけに近い、坊主ももう睡ったに相違ない、睡っていたらお前達にも、の太った旨そうな奴を啖わしてやる、何人たれか往って容子を見て来い
轆轤首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、彼が吉延の谷に着いたのはまだ黎明よあけ前で林の下は真暗であった。
山の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もう黎明よあけに近くなって鶏が其処でも此処でも啼いていた。権八は平太郎の家にもなにか怪しいことがあったではないかと思ったので、急いで門口を入って玄関へ往って声をかけたが返事がない。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)