鹿垣ししがき)” の例文
「あれが八そうやま宮部みやべさと、小谷から横山まで三里のあいだを、鹿垣ししがきさくをもって遮断しゃだんすれば、敵の出ずる道はもう一方しかありません」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立ち続く峰々はいちある里の空を隠して、争い落つる滝の千筋ちすじはさながら銀糸を振り乱しぬ。北は見渡す限り目もはるに、鹿垣ししがききびしく鳴子なるこは遠く連なりて、山田の秋も忙がしげなり。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
案のじょう、白川のほうから行く道にも、神楽岡かぐらがおかから降る道にも、すべて、岡崎の草庵へかよう道には、鹿垣ししがきかこってあって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四冢は前に沔水べんすいの流れをひかえて、要路は鹿垣ししがきをむすび、搦手からめては谷あり山あり深林ありして鳥もけ難いほどな地相である。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん、大橋の橋板はすべて撤去し、橋づめの口には、厳重な鹿垣ししがき。ここには弓隊だけでなく、その後方に長槍隊と歩兵部隊が厚く見える。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり巨大な土壇にたたみあげて、その急斜面には、鹿垣ししがきをつらね、さらに胸壁きょうへきやら板塀など二重三重のかまえを上にむすび、内にはまた大木や大石を山とつんで
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大勢も、配所の鹿垣ししがきの根や、そこらの草むらに腰を下ろして、まだ疑わしげに、がやがや云っていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう二年越しも、きびしい鹿垣ししがきの中に一切の出入りを禁じられている千手院せんじゅいんの森だった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、その夜、西門へ総攻撃するようにみせかけて、ひそかによりすぐった強兵を巽にまわし、自身まッ先に進んで、鹿垣ししがき、逆茂木を打越え、城壁へ迫って行ったが、ひそとして迎え戦う敵もない。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つづいて鹿垣ししがきの鳴子の鈴が風もないのに鳴った。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)