鰭爪ひづめ)” の例文
その一本のふくらはぎの膝から下に、むくむくと犬だか猫だか浅間しい毛が生えて、まだ女のままの指尖ゆびさきけもの鰭爪ひづめかがまって縮んでいる。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はずみ行く馬のあやう鰭爪ひづめに懸けんとしたりしを、馭者は辛うじて手綱を控え、冷汗きたる腹立紛れに、鞭をふるいて叱咤しったせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ヒイイン! しっ、どうどうどうと背戸をまわ鰭爪ひづめの音がえんひびいて親仁おやじは一頭の馬を門前へ引き出した。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
胴にまわし、ぐるぐると縄をく。お百合せなじておもてを伏す。黒髪さっと乱れて長く牛の鰭爪ひづめに落つ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
路はその雑木の中に出つりつ、糸を引いて枝折しおりにした形に入る……赤土の隙間すきまなく、くぼみに蔭ある、樹の下闇したやみ鰭爪ひづめの跡、馬は節々通うらしいが、処がら、たつうろこを踏むと思えば
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蘆毛は、ひとりして鰭爪ひづめ軽く、お沢に行く。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)