すく)” の例文
宇内うだいの大勢を揣摩しまし、欧洲の活局を洞観するの烱眼けいがんに到りては、その同時の諸家、彼に及ぶものすくなし、いわんや松陰においてをや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
車夫や物売りの相貌かほつきも非常に柔和であつて、東京中を横行する彼の恐しい工夫や職工や土方のやうなものは至つてすくない。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
上の彼岸ザクラの正品に対して一体東京方面の学者の認識のうすいのは東京にこのサクラが割合にすくなく、ツマリお馴染みになっていないからであろう。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
いわく「巧言令色すくないかな仁」。いわく何。いわく何。そうしてついに今おしのごとき演出家ができあがって多くの俳優を苦しめているというわけである。
演技指導論草案 (新字新仮名) / 伊丹万作(著)
(二) 有子曰く、その人とり孝弟(悌)にして上を犯すことを好むものはすくなし。上を犯すことを好まずして乱をすことを好むものは、未だこれ有らざるなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
その淵原各々同じからずして、ごうも水戸派の議論に負うすくなきが如しといえども、その実いまだ必らずしもしかりというべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
われらの大先輩に本草学、植物学に精進せられた博物学者の錦窠きんか翁伊藤圭介先生があった。珍しくも九十九歳の長寿を保たれしはまず例のすくない芽出度めでたい事である。
(三) ことよくし色をよくする(人)は、すくなし、仁あること。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)