高欄こうらん)” の例文
ただわずかに残って、今にそびえる天守閣の正しい均斉、その高欄こうらんをめぐらし、各層に屋根をつけた入母屋いりもや作りのいらか、その白堊はくあの城。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
真夜中に、仁王門の高欄こうらんの上から、まるで石川五右衛門みたいに、人間豹が頬杖ほおづえをついて、仲見世なかみせの通りを見おろしていたという怪談もあった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
遠くの高欄こうらんをちらと行く侍女やら上﨟じょうろうの美しさも、都振りそッくりを、この伊吹の山城やまじろへ移し植えたとしか思えない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直衣のうしなどを着て、姿を整えた源氏が縁側の高欄こうらんによりかかっているのが、隣室の縁低い衝立ついたての上のほうから見えるのをのぞいて、源氏の美の放つ光が身の中へしみ通るように思っている女房もあった。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と、その辺りから声がするのでよく見ると、まぎれもない司馬懿仲達が、やぐら高欄こうらんに倚って、疎髯そぜんを風になぶらせながら、呵々かかと大笑しているではないか。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丹塗にぬり高欄こうらん美々びびしく、見上げるばかりの五重の塔が聳えている。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
表御堂の広縁や客殿の高欄こうらんのあたりからは、それへ向って、叫ぶ風そのままな矢唸やうなりが吹いて来る。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵のかしらは、そう話してから、高床の床下を覗きこんだり、ほそ谷川のあなたこなたへ、松明を振らせてしきりに騒ぎぬいたすえ、やがて高欄こうらんのうちを見上げて
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)