髑髏されこうべ)” の例文
ただし虎の髑髏されこうべを獅のと較べると獅の鼻梁はなばしらと上顎骨が一線を成して額骨とわかれ居るに虎の鼻梁は上顎骨よりも高く額骨に突き上り居る
お雪ちゃんはいい気持になりながら、薪を取っては加え、取っては加えているうちに、髑髏されこうべは、あとも形もなく焼け失せてしまいました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
先年村での旧家の老母を葬る日、墓守がぶらりと墓地に往って見たら、墓掘り役の野ら番の一人が掘り出した古い髑髏されこうべを見せて
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二度とふたたびお逢いできぬだろう心もとなさ、わば私のゴルゴタ、けば髑髏されこうべ、ああ、この荒涼の心象風景への明確なる認定が言わせた老いの繰りごと。
二十世紀旗手 (新字新仮名) / 太宰治(著)
立っているだけなら別に子細もないが、片手に髑髏されこうべを持って、なにやら頭の上にかざしてでもいるような。わしも薄気味が悪うなって、そっとぬき足をして通り過ぎた
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ゴルゴタという語は髑髏されこうべという意味であると、記者は読者のために言葉を添えています。たぶん木の生えてない丸い形の丘で、その恰好かっこうが髑髏に似ていたのでしょう。
灰色の壁は湿気のために色があせ、歳月を経て崩れおちそうになっている。白いこけの衣が壁にはめこんだ記念碑の碑文をおおい、髑髏されこうべや、そのほかの葬儀の表象をもかくしている。
無気味ぶきびにゲタと笑いかけて其儘固まって了ったらしい頬桁ほおげたの、その厭らしさ浅ましさ。随分髑髏されこうべを扱って人頭の標本を製した覚もあるおれではあるが、ついぞ此様こんなのに出逢ったことがない。
その女の亡くなった亭主の髑髏されこうべ
菖蒲あやめおいけのきいわし髑髏されこうべ
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人間の髑髏されこうべ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
それは、申すまでもなく、中流に流れもやらず留まりもえずに漂動して、あなめあなめと泣いている髑髏されこうべを見たからです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水湧き、樹木鬱蒼うっそうとして、中央には生命の樹があり、この荒涼たる髑髏されこうべの丘とは正反対の楽園です。ゴルゴタを去ってパラダイスへ、死を去って生命へ、苦痛を去って歓喜へ。
陶器師の婆の話によれば、藻は白い髑髏されこうべをひたいにかざして暗い川端に立っていたこともあるという。しかもそれを話した婆は、やはり古塚のほとりで怪しい死に方をしていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その穴跡より一本のあし生え、秋風の吹くにつけてもあなめ/\と小町の髑髏されこうべの眼穴に生えたすすきうなった向うを張って、不断ミ王驢耳を持つ由囁き散らし、その事一汎いっぱんに知れ渡った由。
名将の髑髏されこうべと称するものを天上に投げ上げた米友は、そのまま後ろに転び、仰向けに転がって、そうして、岸の上にさして置いた例の杖槍を手に取ると
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鬼火のように青く光っているのは、彼女が枕にしている一つの髑髏されこうべであった。藻はむかしから人間のはいったことのないという森の奥に隠れ、髑髏を枕にして古塚の下に眠っているのであった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)