)” の例文
国ヶ岩君が香をかぎつけて『一杯んで呉れ』と入つて来た。『これぢや食へんからのう』と差出す賄の上には塩鮭が一切れ佗しく戴つてあつた。
相撲の稽古 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
ついこなひだのこと、侯爵細川護立氏のところへ、春陽会の若い画家五六人がばれて往つたことがあつた。山崎省三氏もその中にまじつてゐた。
少年の頃、自分がうまいものをよそでばれて帰って話すとき、母は根掘り葉掘り詳しく聞き返し、まるで自分が食べでもしたような満足さで顔を生々とさしたではないか。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
柴草を刈りに行く連中は、和助の家をいゝ休み場にして、お茶をばれて辨當をつかつた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
先日こなひだ神戸高商の小川忠蔵、小久保定之助ていのすけの両氏が、英語専攻の学生にばれた返礼を、安上りだといつてカフエエ・オリエントでする事になつた。
で、ある日の晩餐デインナーに、知り合ひの誰彼をんで、試しに一皿づつ出してみた。そしてこんな事を言つて吹聴した。
希臘ギリシヤのある皮肉哲学者が富豪かねもちばれた事があつた。哲学者が富豪かねもちに思想を説きたがるやうに、富豪かねもちはまた哲学者に自分の住んでゐる世界を見せびらかしたいものなのだ。
『シエーキスピア物語』で日本人にもよく知られてゐるチヤールス・ラムが、ある時多くの知合しりあひと一緒に誰かの晩餐にばれた事があつた。皆が食卓につくと、主人役は
狩野氏のやうに血眼になつて真理を捜してゐるか、うかは知らないが、狩野氏同様に独身主義者である。そのエエド氏がある時知り合ひの結婚式にばれて列席した事があつた。
パスツウル研究所の創設者ルイス・パスツウルは名高い化学者だつたが、この人もモムゼンと同じやうに、どうかすると自分を忘れるたちであつた。ある時娘のうちに往つて、桜実さくらんぼばれた事があつた。