飯炊めした)” の例文
まだ木綿問屋にいた頃、飯炊めしたきのじいさんが、若い時分在所ざいしょにあった事実談だといって、気味の悪い話をしたのを、彼はよく覚えている。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あんな多勢の店に、下女一人、飯炊めしたき一人置かずに、お銀さん一人で働くのは、容易のことぢやないわけだけれど、あの人は氣が強いから
おおきいいえがありましてね、そこの飯炊めしたがまは、まず三ぐらいはける大釜おおがまでした。あれはえらいぜにになります。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あれは番町のお旗本のお嬢様で、連れている猿みたいな小僧は、根府川ねぶかわのお関所で飯炊めしたきをしていたのを、用心棒のためにもらいうけて連れて歩いているのさ。あの小僧と棒押しを
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気がついたのは両親でもきょうだいでもなく、足助あすけという飯炊めしたきの老僕であった。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ガラッ八の声に応じてノソリと出たのは、お政の使っている飯炊めしたき、庭も掃けば使い走りもするといった、調法至極な男です。
きさまは、まだ釜師根性かましこんじょうがぬけんからだめだ。そんな飯炊めしたがまがねなどばかりてくるやつがあるか。それになんだ、そのっている、あなのあいたなべは。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
くりやで働いている飯炊めしたき僧が、顔をあつめて、囁いていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飯炊めしたきのお三の父親は、根津の大工で、重三郎に借りた金のことから、二年前大川へ身を投げて死に、お三はその借金をし崩しに拂ふために
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
飯炊めしたきのお三の父親は、根津ねづの大工で、重三郎に借りた金のことから、二年前大川へ身を投げて死に、お三はその借金をし崩しに払うために
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
三次が濟むと、あとは下女のお仲に、飯炊めしたきのお六、どちらも在郷者ざいがうもので、若樣紛失とは關係がありさうにも見えません。
「臭い奴だらけですよ。臭くないのは娘のおひなと、下女のお仲と、飯炊めしたきのお三ぐらゐのもので——」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「臭い奴だらけですよ。臭くないのは娘のお雛と、下女のお仲と、飯炊めしたきのお三ぐらいのもので——」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
仲働きはお増といふきかん氣らしい中年者、飯炊めしたきは信州者の名前だけは色男らしい權三郎。
「貧乏な浪人暮しで、下女も飯炊めしたきも置かなきゃ、娘の手も荒れるでしょうよ」
しかしこれだけ顛倒てんだうすると、急にお勝手へ飛んで行つて、行燈や手燭を持つて來るほどの氣の廻る人間もなく、お勝手に居る飯炊めしたきと近所の女房達は、奧の騷ぎにすつかりおびえてしまつて
「貧乏な浪人暮しで、下女も飯炊めしたきも置かなきや、娘の手も荒れるでせうよ」