風雨あらし)” の例文
なるほど、その人たちに対して危害を加えはしませんでしたが、その風雨あらしのすさまじいことは大変で、相手の者はみな彼の前に縮みあがってしまいました
それが風雨あらしのために迷い出したので、鱗はなにかほかの魚のものであろうと説明する者もあった。いずれにしても、彼がゆくえ不明になったのは事実である。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すなわち、わたしの意思に反抗する他の意思があって、その強い程度においては風雨あらしのごとく、火のごとく、その実力においてはかの鱶のごときものであった。
われわれは船を停めて救助艇ボートをおろしましたが、その晩はまるで風雨あらしの起こる前のように静かな晩でしたのに、どうしてもその男の姿は見つかりませんでした。
建込んだきたならしい家の屋根つづき、風雨あらしの来る前の重苦しい空に映る燈影ほかげを望みながら、お雪とわたくしとは真暗な二階の窓にって、互に汗ばむ手を取りながら
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
奥様は短い一夜の夢で、長い間の味方までも御疑いなさるように成ましたのです。——風雨あらし待つ間の小鳥の目の恐怖おそれ、胸毛の乱れ、脚の戦慄わななき、それはうつして奥様の今の場合をたとえられましょう。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御承知の通り、十二、十三の両日は強い風雨あらしで、十四日は境内の掃除がなかなか忙がしゅうござりました。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかも真夜中ごろだというのに、風雨あらしは起こっていました。
人の世に羽を撃つ風雨あらし
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで、あくる日、約束の時刻に行ってみると、果たしてたにの北方から風雨あらしのような声がひびいて来て、草も木も皆ざわざわとなびいた。南の方も同様である。
風雨あらしかわき雲に
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
去年の地震といい、ことしの風雨あらしといい、江戸の人々もずいぶん残酷にたたられたといってよい。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
風雨あらしかわき雲に
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「いえ、もう遅いので……。ことしは二百十日の風雨あらしで散々にやられてしまいました」
天の風雨あらし雷霆いかづち
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その年の秋に強い風雨あらしがあって、わたしの家の壁に雨漏りの汚点しみが出た。
ゆず湯 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その年の秋に強い風雨あらしがあって、わたしの家の壁に雨漏りの汚点しみが出た。たいした仕事でもないから近所の人に頼もうと云うことになって、早速徳さんを呼びにやると、徳さんはこころよく来てくれた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)