頬邊ほつぺた)” の例文
新字:頬辺
頬邊ほつぺたは、鹽梅あんばいかすつたばかりなんですけれども、ぴしり/\ひどいのがましたよ。またうまいんだ、貴女あなたいしげる手際てぎはが。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
健康さうな頬邊ほつぺたの色、笑はない時にも微かな皺の寄つてゐる目尻、くくり顎の線のはつきりした、何處から見ても善良で、生活力にみちみちてゐた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
今わたしの頬邊ほつぺたを吹きつけてゐる目にも見えないくらゐ、薄い細かい吹雪が彼の邊に吹き廻つて、それが、霧のなびいてゐるやうに見えるのであらうと
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
清水のふね、落雷のために裂けた高い杉の幹、それから樂しい爐邊の火に映るお文さんのお母さんの艶々とした頬邊ほつぺたなどを遠く離れて居てしかもあり/\と見ることが出來ました。
例之、鐵の棒におつつけてゐた額、十四になる小娘のたべてやりたい頬邊ほつぺた、上新の皺だらけな足頸、人形屋の店さきに投げ出してあるやうな足が二本。
むねだの、うでだの、ふたツは、あぶな頬邊ほつぺたを、」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頬邊ほつぺたこそげるやうに冷たくうるほしてゆく。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
頭髮あたまの中を這つて、額や頬邊ほつぺたを傳ふ酒の雫は、襟頸やふところに流れ込んだ。怒るだらうと思つた三田が默つて坐つてゐるので、蟒は張合がぬけてしまつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
お隣のお寺の前の大道に出て、段々家の方に來る樣子だつたが、その時ふと、お寺の門内から女中らしい女が、風呂敷包を抱へて出て來た。まるまると肥つた、頬邊ほつぺたの赤い、縮毛の女だつた。
貝殻追放:016 女人崇拝 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)