あらたま)” の例文
彼らしい新味ある施政と威令とは、沈澱ちんでん久しかった旧態を一掃して、文化産業の社会面まで、その相貌そうぼうはまったくあらたまってきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物にかびを誘ふことの甚しい雨であつた。此間にお桐の容体はあらたまつた。絶間なしにたんを吐いて居た。肺が全部腐敗して出て来るかと思はれるほど烈しかつた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
関西では吉益東洞よしますとうどう、といふやうな名医が出て、共に古方こほうの復興を唱へ、実技もおおいあらたまり、この両派の秀才が刀圭とうけいつかさどる要所々々へ配置されたが、一般にはまだ、行きわたらない。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
政治しばしばあらたまるといえども、その文運はいぜんたるのみならず、騒乱の際にも、日に増し月に進み、文明を世界に耀かがやかしたるは、ひっきょう、その文学の独立せるがゆえならん。
この哀愁は迷信から起る恐怖と共に、世のあらたまるにつれて今や全く湮滅し尽したものである。わたくし等が少年の頃には風の音鐘の響犬の声按摩の笛などが無限の哀愁を覚えさせたばかりではない。
巷の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
萬物其もとゐよりしてあらたまりぬ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)