霜枯しもがれ)” の例文
いかに時頼、人若ひとわかき間は皆あやまちはあるものぞ、萌えづる時のうるはしさに、霜枯しもがれの哀れは見えねども、いづれか秋にはでつべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ボロ市過ぎて、冬至もやがてあとになり、行く/\年もくれになる。へびは穴に入り人は家にこもって、霜枯しもがれの武蔵野は、静かなひるにはさながら白日まひるの夢にじょうに入る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
櫻庭丘介は氣さくに立ち上がり、平次を伴れて、霜枯しもがれの深い庭を彼方、此方と案内してくれました。
いえね、狐火でも欲しいほど、洋燈ランプがしょんぼりいたばかり、それも油煙にくすぶって、近常さんの内はまた真暗まっくらになりました。……お正月がそれなんですもの。霜枯しもがれの二月をお察しなさい。
霜枯しもがれ幾基米突いくきろめえとるに亘る鬱憂を逞しうして
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
其の御心の強さに、彌増いやます思ひに堪へ難き重景さま、世に時めく身にて、霜枯しもがれ夜毎よごとに只一人、憂身うきみをやつさるゝも戀なればこそ、横笛樣、御身おんみはそを哀れとはおぼさずか。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
最初蝦夷松椴松のみどりひいであるいは白く立枯たちかるゝ峰を過ぎて、障るものなきあたりへ来ると、軸物の大俯瞰図のする/\と解けて落ちる様に、眼は今汽車の下りつゝある霜枯しもがれ萱山かややまから
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
霜枯しもがれから引続き我慢をしているが、とかく気になるという足取あしどり
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)