雪融ゆきど)” の例文
加之おまけみちが悪い。雪融ゆきどけの時などには、夜は迂濶うっかり歩けない位であった。しかし今日こんにちのように追剥おいはぎ出歯亀でばかめの噂などは甚だ稀であった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
十勝岳とかちだけ近頃ちかごろまで死火山しかざんかんがへられてゐた火山かざんひとつであるが、大正十五年たいしようじゆうごねん突然とつぜん噴火ふんかをなし、雪融ゆきどけのため氾濫はんらんおこし、山麓さんろく村落そんらく生靈せいれい流亡りゆうばうせしめたことは
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
家の屋根から、また庭の樹木から、雪融ゆきどけの水が砂の上にしたたって、ささやかな音をたてていた。遠くには、街路で雪合戦をしてる子供たちの笑い声がしていた。
これを識別するには、雪を手で振るといい。指の間から水がしたたるようでは駄目だし、音を立ててきしんで、固いボウルになれば占めたものだ。雪融ゆきどけは空気のにおいで解る。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)