ひなた)” の例文
どこまでも留守をあずかる人のようにこしらえて、かげになり、ひなたになって、姉を助けて志を成さしめていただきたい、それを御承知ならば
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
◎私も蔭になりひなたになり色々龍馬の心配をしたのですからセメて自分の働た丈の事は皆さんに覚えて居て貰い度いのです。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
この大勢の人達は人を食おうと思ってかげになりひなたになり、小盾になるべき方法を考えて、なかなか手取早く片附けてしまわない、本当にお笑草わらいぐさだ。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
光りの事は水の中に入りてひなたのところ陰のところに二種のものの如何に見ゆべきやを検めでは何とも云ひ難し、又壔形球形の説も道理には聞ゆれど
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かげひなたに正木先生と連絡を取って、御自分の地位と名誉を投げ出す覚悟で声援をしておられた形跡があります。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いやすべては互いに裏となり表となり、かげとなり、ひなたとなって生かし、生かされつつある貴い存在ものなのです。まことに、「つまらぬというは小さき智慧袋」です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
客は、ひなたの赤蜻蛉に見愡みとれた瞳を、ふと、畑際はたぎわの尾花に映すと、蔭の片袖が悚然ぞっとした。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
例の美しと見らるる浅ましさより、なほはなはだしき浅ましさをその人のかげひなたに恨み悲むめり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何処までも隠してかげになりひなたになりして異見をしねえければならねえ処を、親が先へ立って殺したんべい/\というのが本当に呆れた、多助さん、あんたが出れば此のうちは潰れやすよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)