阿修羅王あしゅらおう)” の例文
それまでの関羽は、さながら天魔の眷族けんぞくを率いる阿修羅王あしゅらおうのようだったが、はッと、偃月刀を後ろに引いて、駒の手綱を締めると
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
六本の腕を一ぱいに拡げながら、何処か遥かなところを、何かをこらえているような表情で、一心になって見入っている阿修羅王あしゅらおうの前に立ち止まっていた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ニキタはぱッとけるより、阿修羅王あしゅらおうれたるごとく、両手りょうてひざでアンドレイ、エヒミチを突飛つきとばし、ほねくだけよとその鉄拳てっけん真向まっこうに、したたかれかおたたえた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一、そも/\山の御神、数を申せば千二百神、本地薬師如来ほんちやくしにょらいにておはします。観世音菩薩かんぜおんぼさつの御弟子阿修羅王あしゅらおう緊那羅王きんならおう摩𦞈羅王まこうらおうと申す仏は、日本の将軍に七代なりたまふ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
阿修羅王あしゅらおうが炎の車にのって火の粉を降らし煙の雲をわかしゆくがごとくあばれまわった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
阿修羅王あしゅらおうのごとく狂い逆上した左膳が、お藤の手をねじあげて身体中ところ嫌わず踏みつけるその形相ぎょうそうに! 思わずぎょっとしてしりごみしていると、陰にふくんだ声が惻々そくそくとして洩れてきた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)