えっ)” の例文
この暁方あけがた、清洲の城を出た時は、主従のわずか、六、七であったものが、今ここでえっすれば、約三千に近い兵が数えられた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千七百年の歳月をえっしても、乾き切った砂の中に埋れていた木簡は、特に二枚かさなったまま発掘されたものなどは、内面の文字の墨色が昨日のもののようにあざやかであったそうである。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
これは鴎外の大著蘭軒伝中に事をわけてつぶさに述べてある。この日鴎外は文部省展覧会で児童が石蒜をんで帰る図を観てこれを奇としたが、その夜蘭軒詩をえっしてまたこの花に逢ったといってある。
大将張飛も最大な敬意と静粛をもって、出迎えの兵をえっし、黄旗青旗金繍旗きんしゅうき日月旗じつげつきなど、万朶ばんだの花の一時にひらくが如く翩翻へんぽんと山風になびかせた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日——安土城下から立って行った秀吉の軍容ぐんようは、実に威風堂々たるものだった。信長はそれを天守閣てんしゅかくからえっして
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(我れ呉とともに生きず)と、宣言してからの彼は、以来毎日のように練兵場へ行幸みゆきして、みずから兵をえっし、軍馬を訓練し、ひたすらその日を期していた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ今から諸軍をえっして、御本陣は明九日の、暁天の御発足の予定とうかがいましたが、はかるに明日は、出でて再び帰ることなしという大悪日にあたります。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日も彼は、舟手の訓練をえっして、湖畔の官邸へひきあげて来ると、そこへ孫権からの早馬が来て
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早暁そうぎょうに、十万の軍をえっし、諸将の口から、昨夜来、ここへ馳せつけて加わった新しい兵数の報告を聞き、その部将たちに目通りを与え、また、老将千葉介常胤や上総介広常には
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼方かなたの森の中からである。程なくそこの篠村八幡の境内から光秀以下、騎馬の幕僚ばくりょうたちが、西陽にしびを斜めに、燦々さんさんとして騎歩しずかに、各部隊をえっしながら順次こなたへ近づいて来るのが見られた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、三千の兵をえっして
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)