錐揉きりも)” の例文
冷やかに眺めてさばき、深く自省に喰い入る痛痒いたがゆ錐揉きりもみのような火の働き、その火の働きの尖は、物恋うるほど内へ内へと執拗しつこく焼き入れて行き
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
土器の中には此石錐いしきりにてけたるに相違無き圓錐形のあな有る物有り。すでに錐の用を知る、焉ぞ錐揉きりもみの如き運動うんどうねつを用ゆる事をらざらん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
車は交叉点を横切ると、速力を緩急するたびに乗客を投付けたり、錐揉きりもみの様にしたりしては走り続けた。恰度ちょうど険阻けんそを行く様に波打ったり傾いたりした。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
逆転、横転、錐揉きりもみと、自由自在に飛び廻る鳥人の妙技につれて、夕立雲の様に毒々しい煙幕は、見る見る紺青の空を、不思議な曲線で塗りつぶして行く。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一蹴いっしゅうの下に突破して、ただちに徳川、織田の中軍へ錐揉きりもみ戦法で押し通るつもりであったらしい。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度ちょうど、そのとき、異様な響をたてて、一台の飛行機が、火焔に包まれ、錐揉きりもみになって、落下してきた。焼けのこった機翼の尖端せんたんに、チラリと、真赤な日の丸が見えた、と思った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
或は逆立さかだちし、或は飜筋斗返とんぼがえりし、斜立しゃりつしたるまま静止し、又は行歩こうほし、丸太転び、尺蠖歩しゃくとりあゆみ、宙釣り、逆釣さかづり、錐揉きりもみ、文廻ぶんまわし廻転、逆反さかぞり、仏倒ほとけだおし、うしろ返り、又は跳ね上り、飜落ほんらくするなぞ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
また、錐揉きりもみ式に、前衛を突破し、中軍へ目がけて猛襲して来る織田勢。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)