野面のら)” の例文
く働くことに掛けては男子にもまさる程であるが、教員の細君で野面のらにまで出て、烈しい気候を相手に精出すものも鮮少すくない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
可懐なつかしい姿、ちっ立佇たちどまってという気もしたけれども、小児こどもでもいればだに、どのうちみんな野面のらへ出たか、人気ひとけはこのほかになかったから、人馴ひとなれぬ女だち物恥ものはじをしよう、いや、この男のおもかげでは、物怖ものおじ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
岡辺も暮れかかって来て、野面のらに居て働くものも無くなる。向うの田の中に居る夫婦者の姿もよく見えない程に成った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
青い野面のらには蒸すような光が満ちている。彼方此方あちこちの畠わきにある樹木も活々いきいきとした新葉を着けている。雲雀ひばりすずめの鳴声に混って、鋭いヨシキリの声も聞える。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
麦秋むぎあきだ。一年に二度ずつ黄色くなる野面のらが、私達の両側にあった。既に刈取られた麦畠も多かった。半道ばかり歩いて行く途中で、塩にした魚肉の薦包こもづつみを提げた百姓とも一緒に成った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)