酒浸さけびた)” の例文
仕事のうえの嫉妬しっとではなく、それまでのじだらくな遊蕩ゆうとうや、酒浸さけびたりの習慣から縁を切って、すべてを絵にうちこませるために、わざとそんなふうに邪険なことをしたのではないか。
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すそ曳摺ひきずりて奥様おくさまといへど、女はついに女なり当世たうせい臍繰へそくり要訣えうけついわく出るに酒入さけいつてもさけ、つく/\良人やど酒浸さけびたして愛想あいそうきる事もございますれど、其代そのかはりの一とくには月々つき/\遣払つかひはらひに
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
彼等は主膳に酒を飲ませておいて——ではない、主膳が昨晩から酒浸さけびたりになって、今は熟睡しているのをよいことにして、ていのいい置いてけぼりを食わせて、みんな出払ってしまいました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
酒浸さけびたしになってる赤ぶくれの兄の顔は、十年以前と、さしたる変わりはなかったが、姉はもうしわくちゃな、よいばあさんになっていた。おいはがんじょうな男ざかりになって、稲をかついでいた。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なくては過ごせぬ酒浸さけびたりのまま、その儀はふッつり断念仕り候
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)