-
トップ
>
-
追憶
>
-
つゐおく
勘次は
追憶に
堪へなくなつてはお
品の
墓塋に
泣いた。
彼は
紙が
雨に
溶けてだらりとこけた
白張提灯を
恨めし
相に
見るのであつた。
さう思つて、私は、
怖さを
募らせながら、リード氏のことを
追憶した。
悲しい一生の
悔恨や
悲嘆や
追憶は
然し
勘次自身には
如何な
種類の
物でも
現在彼の
心に
與へ
得る
滿足の
程度は、
失うたお
品を
追憶することから
享ける
哀愁の十
分の一にも
及ばない。