迂濶うっか)” の例文
氏の慇懃丁寧なる、もし書斎のデスクの上へ、迂濶うっかり腸を忘れて行こうものなら、後から小包郵便にして、そえ手紙と共に送り返される。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
長「黙れ、毀した事は先刻さっきわしく見て置いたぞ、お父さま、迂濶うっかりしてはいけません、此者これは中々油断がなりません、さ、早く致せ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「飛び込んで来た、よい囮が! 今まで迂濶うっかりしていたよ。……何よりの玉だ、こいつを利用し……」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お嬢様はおやしきに入らっしゃっても貴方の事ばかり思って入らっしゃるものだから、つい口に出て迂濶うっかりと、貴方の事を仰しゃるのが、ちら/\と御親父様ごしんぷさまのお耳にもはいり
「これは早速には出られそうもない。迂濶うっかり出ると風邪を引く。ちとこれは迷惑だわえ」
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床へ来るとわっちがいて、旦那どうして此方こちらへ出ていらしったと云うと、商売替しょうべいげえをする積りで、滅法界めっぽうけい金を持って来て、迂濶うっかり春見屋へ預けたと云うから、それはとんだ、むゝなに
悪い事とも心附かず迂濶うっかり其の金を使い是から家主と相談の上で訴え出ようと云う心得で有ったが、其のうちに勘次郎という者が其の方の手許に金子の有る事を知って盗み取ったが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なるほど、普通ただの子供ではないな。これは迂濶うっかり油断は出来ぬ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
誰かと云うて顔色を変えて……迂濶うっかりした事は云えない、しかと是はと云うしょうもなし、何も僕がその密夫と同衾ひとつねていた処を見定めた訳では無いけれども、何うも怪しいと云うのは
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを迂濶うっかり見がすような、武士は不用意の人間ではない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
相「龜藏安受合やすうけあいするなよ、彼奴あいつと大曲で喧嘩した時、大溝おおどぶの中へ放り込まれ、水をくらってよう/\逃帰ったくらい、彼奴ア途方もなく剣術が旨いから、迂濶うっかたゝき合うとかなやアしない」
これは水飴の中へ入れてもく分りますので、毒虫を煮てらんびきにいたして、その毒気どくきを水飴の中へ入れたら、やわらかになって宜かろうというお頼みで、迂濶うっかりお目通りをして其の事を伺い
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
×「えゝ殿様、此者これは全くくらい酔って迂濶うっかり云ったんで」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女「はい、決して神かけて嘘は申しません、どうぞ此の事はくわしくまだ大屋様へは申しませんから、どうか内聞になすって下さいまし、東京のお方で御親切に仰しゃって下さいまして、お懐かしいから迂濶うっかり申したので、どうぞ御免なすって」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)