軒毎のきごと)” の例文
此の間も麻布あざぶ骨董屋こっとうやをひやかしに出掛けた帰りに、人の家をひやかして来た。一寸ちょっと眼に附く家を軒毎のきごとのぞき込んで一々点数を附けて見た。
軒毎のきごとに立たせて、物を売らせるのや、まだ四つか、五つの子供を地面じべたに坐らせて、通る人々に頭を下げさして、ぜにわしめるのなどを、私は、見る時に、血が逆上する。
子供は虐待に黙従す (新字新仮名) / 小川未明(著)
家々の小さなともしびが、しづかに晩秋の夕べをともると、軒毎のきごとにある人間苦が、覗かれる氣がする。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
各自おの/\でうつゑたづさへ、續々ぞく/\市街しがい入込いりこみて、軒毎のきごとしよくもとめ、あたへざればあへらず。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
百姓屋の軒毎のきごとに立つる朝食あさげの煙は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
軒毎のきごとに雪の解けるしづく。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)