かは)” の例文
さう云つた夫人の顔は、さすがに緊張した。が、夫人は自分で、それに気が付くと、直ぐ身をかはすやうに、以前の無関心な態度に帰らうとした。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ひらりと身をかはすが早いか、そこにあつた箒をとつて、又掴みかからうとする遠藤の顔へ、床の上の五味ごみを掃きかけました。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
徐大盡じよだいじんなんとしたか、やあ、とに、とびらのなりにかはして、畫師ゑしが、すつと我手わがてけて
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
水兵すいへいヒラリとかはすよとに、こし大刀だいたう※手ぬくてせず、猛狒ゴリラ肩先かたさき斬込きりこんだ。
事の破れと見た覆面の武家、必死の勢ひで平次に斬つてかゝるのを、二三度はかはしましたが、さすがに容易ならぬ腕前。大川の夜の水へギリギリまで追ひ詰められて、錢形平次も持て餘し氣味です。
敵に、素早く身をかはされたやうに、勝平は心の憤怒を、少しも晴さない中に、やみ/\と物別れになつたのが、口惜しかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
いや、それはかはしたところが、三にてられるうちには、どんな怪我けが仕兼しかねなかつたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
新公は咄嗟とつさに身をかはさうとした。が、傘はその途端に、古湯帷子ゆかたの肩を打ち据ゑてゐた。この騒ぎに驚いた猫は、鉄鍋を一つ蹴落しながら、荒神くわうじんの棚へ飛び移つた。
お富の貞操 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夫人は、ひらりと身をかはすやうに、真面目なしんみりとした態度に帰つてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)