身状みじょう)” の例文
「たとい叔父さんが引っ張り出したにしても、雷に撃たれたのは災難じゃあないか。自分たちの身状みじょうが悪いから、ばちがあたったのさ。」
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは彼が、時々酒を飲みに行く、近辺の或安料理屋にいる女の一人であった。彼女は家にいてはく働いたがその身状みじょうを誰も好く言うものはなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この男、晩年に中気ちゅうきになった。身状みじょうが直ってから、大きな俥宿の親方がわりになって、帳場を預かっていたので、若いものからよくしてもらっているといった。
二人の身状みじょうを預かっている以上、たとえ、どんな事があっても、仲間を裏切るような真似はしないつもりだが、この間から見ていれば、何か、おれにはしかくしにして
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……手前の身状みじょうについては、叔父の庄兵衛から申しあげたはずですが、なんと言いますか、ちょっと文殊菩薩もんじゅぼさつの生れかわりとでもいったぐあいで、手前がひと睨みくれますと
どういう身状みじょうをしているか、連の相手の葛岡さんという青年が、こんな律儀な方と思わないものだから、誘惑されてしまったのじゃないか、それが心配で、地団太を踏んだものだ。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その殺人鬼の陶器師すえものしが。……だが一方から云う時は、可哀そうな男でございます。不貞の妻の身状みじょうから、あたら武士道を捨ててしまい、活きながらの地獄入り、鬼になったのでございますもの。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
少し長吉の身状みじょうについて尋ねて見ようと考えたのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれは下谷の小森という与力の屋敷の中間で、ふだんから余り身状みじょうのよくない、方々の屋敷の大部屋へはいりこんで博奕ばくちを打つのを商売のようにしている道楽者であった。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いくら色気抜きの兄さんでも、あたしは兄さんが他の女にとられるのを見ちゃいられないわ。だから済まないが身状みじょうだけは正しくしといてね。その代りあたしも身状は正しくしとくから」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そいつがだんだんに身状みじょうが悪くなって、二十七八の年にとうとう伊豆の島へ送られた。十年ほども島に暮らしていたのですが、もう辛抱が出来なくなって、島ぬけを考えた。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分の身状みじょうが悪い為に、旅から旅を流れに渡って、「くにゃ辛い」と唄にまでうたわるる飛騨の山家やまがに落ちて来たが、それでも自分には自分の生命せいめいが有る、自分には自分の恋が有る。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)