あが)” の例文
彼は其の惱を以て祖先の遺傅から來た熱病の一種と考へ、自ら意志を強くして其のバチルスを殲滅せんめつしようと勤めて而してあがいてゐた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
華族は、その圧迫を切り抜けようとしてあがく。が、あがいたため、かえって成金の作っておいたわなに陥って、法律上の罪人になるという筋だった。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さっ!——と、文字若の顔から血の気が引いて、藤吉の手を蹴り解いてあがき起とうとした刹那
なまじあがいたら、僕らは復讐されますぜ。発砲はやめます。敵艇の砲手の腕前は、驚くべきものですよ。断じて、盲目弾めくらだまではない。最初の警砲は、本船の右舷近くに落ちたでしょう。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あがりしたのである。けれども、女の身の格別好いちえも分別も出なかつた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「安心なんか現代にあるものか。新しき幸福ニュウ・ハッピネスとか知られざる神アンノン・ゴッドとか云ふものが、西洋詩人の理想通り見付かりや結構だが、さも無い間の人間はたゞ動揺あるのみさ。世の冷たい波に揺られ揺られてあがき苦しむのみさ。」
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
空想的の功名にあがいて多大の希望と抱負とを持ツて空しく路傍に悲慘なる人間の末路を見せた青年もあツたであらう。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あがけばつまづき、躓いては踠き、揚句あげくに首も廻らぬ破目はめに押付けられて、一夜あるよ頭拔づぬけて大きな血袋ちぶくろ麻繩あさなわにブラ下げて、もろくもひやツこい體となツて了ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
くるまに乘る人とく人と教會ミツシヨンに行く人と賭場とばに行く人とが出來るのであらうか——際限も無く此様なことを考へ出して、何んとか解決を得やうとあがいて見た。雖然解らなかった。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
鳥屋の店先であをぶくれの若者が、パタ/\あがいてゐる鷄をつかんで首をおツぺしよるやうに引ンねぢツてゐることや、肉屋の店に皮を剥がれたまゝの豚がかぎに吊されて逆さになツてゐることや
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いや、まづい!何といふ劣惡れつあくなもんだえ。何んだツて此様な作を描き上げやうとしてあがいてゐるんだ………骨折損ほねをりぞんじやないか。俺は馬鹿だ、たしかに頭がしびれてゐる。何處に一ツとこがありやしない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)