きよ)” の例文
枝折戸しをりどぢて、えんきよほどに、十時も過ぎて、往来わうらいまつたく絶へ、月は頭上にきたりぬ。一てい月影つきかげゆめよりもなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
臨川寺りんせんじの庭にきよして、獨り靜かに下瞰かゝんするに、水はあくまでみどりに、岩は飽まで奇に、其間に松の面白く點綴てんせつせられたる、更に畫圖ぐわとのごとき趣を添へたるを見る。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
美いかでか死滅すべき。詩神は又波を踏みて伊太利に渡り、古の帝王の住みつる城址にきよして、羅馬の市を見おろしたり。テヱエル河の黄なる水は昔ながらに流れたり。
そのかたはらの石にきよ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)