足手纏あしてまと)” の例文
慌ただしい復旧工事の際足手纏あしてまといで邪魔になるお婆さん達が時を殺すためにここに寄っているのかという想像をしてみたが事実は分らない。
静岡地震被害見学記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
むかしはかういふことの自由じゆう出來できるのが名人めいじんだとおもはれたのですが、いまではかへって、文學ぶんがくあぢはうへ足手纏あしてまとひとして、けねばならぬことであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
女が情夫おとこと別れて、独立の生活を営むにつけて、足手纏あしてまといになる子供を浅井にくれて、東京附近の温泉場ゆばとかへかせぎに行っているのだということも、真実ほんとうらしかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
養母はもとから少し下素げすなところのある、冷たいたちの女であつたが、夫が亡くなつて手もとが苦しくなつてからは、貰ひ子のおくみを足手纏あしてまとひのやうにつけ/\当り出した。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
かく母屋の方に廻つて見たが、元より不知案内の身の、何う為る事も出来ぬので、むし足手纏あしてまとひに為らぬ方が得策と、其儘そのまゝ土蔵の前の明地あきちに引返して、只々たゞ/\その成行を傍観して居た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
こう足手纏あしてまといになられるようなことはけっしてなかったともうすことでございます。