たまわ)” の例文
越前守と、官をたまわっていても、多く、旗本などがお役付きになるのですから、殿中における町奉行の位置なんてものは、低いものだった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
男は片膝かたひざをついて、(自分は御存じないものである。あまりに寒さにえないので、おしになっている衣物を一つ二つたまわりたいのである)
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
法界屋の鉢の木では、梅、桜、松も縁日ものですがね、……近常さんは、名も一字、常世つねよが三ヶの庄をたまわったほどの嬉しさで。
十一日にりよは中奥目見なかおくめみえに出て、「御紋附黒縮緬くろちりめん紅裏真綿添もみうらまわたそひ白羽二重一重しろはぶたへひとかさね」と菓子一折とをたまわった。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
元明女帝の和銅元年、御宴にした三千代のさかずきに橘が落ちたのにちなんで橘宿禰の姓をたまわったのである。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
十月に結城弘経寺ぐきょうじの梅痴上人が紫の袈裟けさたまわり飯沼なる寿亀山弘経寺の住職に任ぜられた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すると皇帝は私に、「立て」と仰せになり、それから、いろ/\と有り難い言葉をたまわりました。国家有用の人物となり、陛下の恩にそむかないようにしてもらいたいというお言葉でした。
どうぞその代り、博士が今お手持ちの発明兵器で、世界一なるものを余にお譲りねがいたい。そこに大英帝国の最後の機会がぶらさがって居るというわけでしてな、どうぞ御同情をたまわりたい。
その夜、僕たちはおかみさんから意外の厚遇をたまわった。困るわねえ、などと言いながらも、そっとお銚子をかえてくれる。われら破れかぶれの討入の義士たちは、顔を見合せて、苦笑した。
未帰還の友に (新字新仮名) / 太宰治(著)
吉助「御水おんみずを頂戴致いてから、じゅりあのと申す名をたまわってござる。」
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)