てふ)” の例文
然るにわたくしは頃日このごろいちけみして一小冊子を獲た。藍界らんかいの半紙二十六枚のマニユスクリイで、茶表紙の上にてふしたせんに「糾繩抄」の三字が題してある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おい、それだつても無銭たゞぢやあ不可いけねえよはゞかりながら神方万金丹しんぱうまんきんたん、一てふびやくだ、しくばひな、坊主ばうず報捨はうしやをするやうなつみつくらねえ、それともうだおまへいふことをくか
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その面持おももちの優しさには、こゝのごとの大さ、美しさかくまでならずば、我胸の躍ることさへ治りしならん。床は鏡の如き大理石なり。壁といふ壁には、めでたき畫をてふしたり。
藤本作次郎の家に宿す。此家戸外に吉備宮きびつみやの神符をてふす。符云。「寒言神尊利根陀見」と。熟察するに八卦なり。抱腹噴飯す。此日雨を得少しく涼し。夜尤清輝。初更菅茶山来訪歓晤徹暁して去る。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)