貞奴さだやつこ)” の例文
しかし今では女も男に負けぬ程ずるくなつた。大隈伯が願を掛けたら、屹度きつと義足を奉納する。貞奴さだやつこだつたら桃介たうすけさんのしんざうでも納めよう。
在来の如何いかゞはしい日本通とちがつて大分だいぶに精細な所まで研究がゆき届いてるらしく、貞奴さだやつこの語がヱレン氏の口から出ると「彼女あのをんなは俳優でない、芸者である」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
先年貞奴さだやつこ巴里パリイへ来た時に用ひた楽譜から採つたと云ふ事だが、大阪侯(実は判官はんぐわん)切腹の場でその陽気な調子を奏するのだから僕等日本人にはたまらない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
何でも御贔屓ごひいきがひにしばゐを見に来たのだが、いつもの気紛れで貞奴さだやつこでも調弄からかはうと思つて楽屋口をくゞつたらしかつた。
自分のくつしたを買ひにか、それとも貞奴さだやつこへの進物を調とゝのへにか、そんな詮議は牧師か女中かのする事で、自分達のやうな忙しい人間のする事ぢやない。とにかく福沢氏は三越へ往つた。
ちやうど女優の貞奴さだやつこが額の皺くちやを塗りつぶして桃介さんの眼をごまかすやうな恰好に。