豆蔵まめぞう)” の例文
弁舌は縦横無尽、大道に出る豆蔵まめぞうの塁を摩して雄を争うも可なりという程では有るが、竪板たていたの水の流をせきかねて折節は覚えず法螺ほらを吹く事もある。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それにもあまり興が乗らず、去って豆蔵まめぞうのぞいたり、奥山の楊弓ようきゅうを素通りしたりしているうちに、日が全く暮れて、兵馬は約束の五重塔の下へ来てみると
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人寄せの独楽こまやら、居合抜き、三文手品、豆蔵まめぞう、弘法様の石芋いしのいも、安玩具などを声をらして売っております。
「たった今、その豆蔵まめぞうをよこしやがって、うるせえとか、やかましいとか、きいたふうな御託ごたくを並べやがったが、うるせえな博労の地がねだ。ここは殿様旅籠はたごじゃねえぞ、博労の多い博労宿だ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべてのうちで最も敬太郎の頭を刺戟しげきしたものは、長井兵助ながいひょうすけ居合抜いあいぬきと、脇差わきざしをぐいぐいんで見せる豆蔵まめぞうと、江州伊吹山ごうしゅういぶきやまふもとにいる前足が四つで後足あとあしが六つある大蟇おおがまの干し固めたのであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて、そういう小っぽけな不具者と云えば、忽ち聯想されるのは、例の豆蔵まめぞうじゃ。所謂一寸法師じゃ。よいかな。そこで、一寸法師というものは、普通どんな所におる。無論家庭にもおるに違いない。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
豆蔵まめぞうの人寄せに言う——うんすんカルタに繻子しゅすの帯、ビードロ細工に人さらい——などはどんなもので」