護謨毬ゴムまり)” の例文
お島が説明してきかす作太郎の様子などで、その時はそれでけるのであったが、その疑いは護謨毬ゴムまりのように、時が経つと、またもとかえった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それから同じ物をもう一つ主人の前に置いて、一口もものを云わずに退がった。木皿の上には護謨毬ゴムまりほどな大きな田舎饅頭いなかまんじゅうが一つせてあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
併し運命がその後私を虐待したのです。あいつは握拳にぎりこぶしで私を滅茶々々にこねまはしさへしたのです。だから今は私は護謨毬ゴムまりのやうに堅く頑固ぐわんこになつてる積りですよ。
地べたを護謨毬ゴムまりか何ぞのように感じるほど、神経質になるものだが、ある年の新学期にエエル大学に入って来た若い人たちのなかに、とりわけ神経質な学生が一人あった。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
大小護謨毬ゴムまりにのッけて、ジャズ騒ぎさ、——今でいえば。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その次には、喜いちゃんが、毛糸で奇麗きれいかがった護謨毬ゴムまり崖下がけしたへ落したのを、与吉が拾ってなかなか渡さなかった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
護謨毬ゴムまりから人間への最後の逆戻りの望みがね。」
枕元まくらもとを見ると、八重の椿つばきが一輪畳の上に落ちている。代助は昨夕ゆうべ床の中でたしかにこの花の落ちる音を聞いた。彼の耳には、それが護謨毬ゴムまりを天井裏から投げ付けた程に響いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)