諸〻もろもろ)” の例文
最初に挙げた『北越雪譜』の著者鈴木牧之は、「雪に関する」諸〻もろもろの珍らしい見聞を記したが、それは『雪華図説』とは余程性質が異るものである。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
野天芸人のてんげいにん諸〻もろもろも、葦簾よしずを掛けたり天幕テントを張って、その中で芸を売っている。「蛇使い」もあれば「鳥娘とりむすめ」もある。「独楽こま廻し」もあれば「かご抜け」もある。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
幕府崩壊のあとの、有象無象うぞうむぞうの策動やら、浮動分子ふどうぶんし誘降ゆうこうやら、探りやら抑えやら、いろいろな裏面症状にたいして、この一毒をもって諸〻もろもろの毒素を制して来たものである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにある諸〻もろもろの生物無生物は皆蒼白く思われたのである。——それほどここには年老いた樹が厚い緑葉みどりばを四方へばし千本万本数知れず生い茂っているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
諸〻もろもろの路地からあふれ出た庶民の群れは、悲鳴と号泣をあげながら、大路の辻へ押しあった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天親菩薩てんじんぼさつは、千部の論師といわれたお方なれど、往生の一段にいたっては、あまねく諸〻もろもろの衆と共に、安楽国に往生せん——と、一心に尽十方無碍光如来じんじっぽうむげこうにょらい帰命きみょうしたまい、曇鸞大師どんらんだいし
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それには諸〻もろもろの尊い智恵が記されてあるのでございます」
いまの元禄の江府こうふや、諸〻もろもろの小都市は、そうした弊風へいふうすさみきっていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人の心のやつに棲む諸〻もろもろ天狗
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)