褫奪ちだつ)” の例文
そこで私は今後この種から間違っているイヌタデの名を褫奪ちだつして、これを本来の正しい名のハナタデに還元させることに躊躇しない。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
しかし鎮守府将軍の官位はさきに尊氏へさずけられていたのだから、いまそれを褫奪ちだつして、顕家へ与えられたことにもなる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また公権をさえ褫奪ちだつして彼をして官途にあたわざらしめ、結局落魄らくはくして郷里に帰るのほかみちなからしめんと企てたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
川島は満洲朝の滅亡と共に雄図蹉跎さたし、近くは直隷軍の惨敗の結果が宣統帝の尊号褫奪ちだつ宮城明渡しとなって、時事日に非なりの感に堪えないで腕をやくしているだろうが
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
やがてそれは元参議江藤新平らの位階褫奪ちだつとなり、百三十六人の処刑ともなって、やみの空を貫く光のように消えて行ったが、この内争の影響がどこまで及んで行くとも測り知られなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
麻雀段位を褫奪ちだつされ、揚句あげくはて
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「以てのほかな怠慢たいまんなりと、数日にわたって、問注所の取調べをうけ、あわやこの清高の職も領も褫奪ちだつされんばかりな詰責でございましてな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長に面罵めんばされ、饗応きょうおうの役を褫奪ちだつされ、憤然、安土あづちを去って、居城亀山へ去る途中、幾日もここに留まって、悶々もんもん、迷いの岐路きろに立ったものだが——
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
饗応役褫奪ちだつの恥を、軍令状の中にまで及ぼし、明智家の不面目を戦陣にまでさらさるる苛酷かこくなお仕打というしかない
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、幕府は、寛永四年、京都所司代板倉周防守重宗いたくらすおうのかみしげむねをして、元和御法度書以後の出世にかかる者は、器量吟味の上、紫衣を褫奪ちだつする旨を布達せしめた。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今度勅命にて下られた左豊卿さほうきょうが、各地の軍状を視察中、盧植の軍務ぶりに不届きありと奏されたため、急に盧植の官職を褫奪ちだつされ、これよりその身がらを、一囚人として
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍職を褫奪ちだつされてこんな浅ましい姿をさらして、都へ差立てられる身とはなってしもうた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、司馬懿仲達に謀反むほんきざしありと、世上へ流布るふさせ、かつ偽りの廻文を諸国へ放てば、魏の中央は、たちまちこれに惑い、司馬懿を殺すか、職を褫奪ちだつして辺境へ追うかするに相違ありません
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)