製造場せいざうば)” の例文
長吉ちやうきちだ首を頷付うなづかせて、何処どこあてもなしに遠くをながめてゐた。引汐ひきしほ堀割ほりわりつないだ土船つちぶねからは人足にんそくが二三人してつゝみむかうの製造場せいざうばへとしきりに土を運んでゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何処どこからともなく煤烟ばいえんすゝが飛んで来て、何処どこといふ事なしに製造場せいざうばの機械の音がきこえる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
すぐうしろの寺の門の屋根やねにはすゞめつばめが絶えなくさへづつてゐるので、其処此処そここゝ製造場せいざうば烟出けむだしが幾本いくほんも立つてゐるにかゝはらず、市街まちからは遠い春の午後ひるすぎ長閑のどけさは充分に心持こゝろもちよくあぢははれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)