裏通うらどおり)” の例文
階下は小売商店の立続いたしば桜川町さくらがわちょう裏通うらどおりに面して、間口まぐち三間さんげんほど明放あけはなちにした硝子店ガラスてんで、家の半分は板硝子を置いた土間になっている。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
片側は空も曇って、今にも一村雨ひとむらさめ来そうに見える、日中ひなかも薄暗い森続きに、うねり畝り遥々はるばると黒い柵をめぐらした火薬庫の裏通うらどおり、寂しいところをとぼとぼと一人通る。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五反田の裏通うらどおりでは、闇の中に、防護団の少年と住民との間に、小ぜりあいが始まっていた。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二人は裏通うらどおりに出て左の方へ五六けん戻ったが、黒い裏門らしい扉をあけて山西の姿がさきにかくれた。女は半身はんしんを入れて門の扉を締めながら、白い小さな顔を岩本の方へ見せて隠れた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かくの如く私が好んで日和下駄ひよりげたをカラカラならして行く裏通うらどおりにはきまって淫祠いんしがある。淫祠は昔から今に至るまで政府の庇護を受けたことはない。
例えば牛込弁天町辺うしごめべんてんちょうへんは道路取りひろげのため近頃全く面目をことにしたが、その裏通うらどおりなる小流こながれに今なおその名を残す根来橋ねごろばしという名前なぞから、これを江戸切図に引合せて