衣更ころもが)” の例文
御手打おてうちの夫婦なりしを衣更ころもがへ」や「いねかしの男うれたききぬたかな」も、やはり複雑な内容を十七字の形式につづめてはゐないか。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
蛙でさえも水田に鳴き、ともを求める時であった。梅の実の熟する時、鵜飼うかいの鵜さえがう時、「お手討ちの夫婦なりしを衣更ころもがえ」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時鳥ほととぎすの鳴く卯月うづきが来て、衣更ころもがえの肌は軽くなったが、お菊の心は少しも軽くならなかった。月が替ってから播磨は再び渋川の屋敷へ呼ばれた。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「お袖、こんな句があったじゃねえか。——お手討の夫婦なりしを衣更ころもがえ。……どうだ、いっそこのまま、夫婦になろうか」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は、言いあわしたように麦藁むぎわら帽をかぶりだし、女は、一夜のうちに白い軽装に変わる。アメリカの生活で楽しい年中行事の一つであるいわば衣更ころもがえの季節だった。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
彼女は東京へ訳を云ってやって、衣更ころもがえの衣類を取り寄せなどして、看護に身を打ち込んでいたが、そんな役目を引きけてでも、東京に帰るよりは此方で暮す方が楽しいらしかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
衣更ころもがえの姿を見よ、と小橋の上でとまるやら、旦那を送り出して引込ひっこんだばかりの奥から、わざわざ駈出すやら、刎釣瓶はねつるべの手を休めるやら、女づれが上も下もひとしく見る目をそばだてたが、車は確に
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新緑はえ、は夏めき、人は衣更ころもがえしているが、伊丹の町には、何となく清新な風もない。よどんでいる。不安がある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて衣更ころもがえという綿入れが重いようにも感じられたが、昔の人は行儀がいい、きょうからあわせを着るわけにも行くまいというので、半七は暖か過ぎるのを我慢して出ると
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
邸のすぐ裏を、今年の花も、加茂かもの水は日ごとに流し去って、若者たちは、衣更ころもがえしている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衣更ころもがへせし
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)