藍染あいぞめ)” の例文
甲斐は好きな藍染あいぞめの木綿の単衣ひとえに、白葛布くずふはかまをはき、短刀だけ差して、邸内の隠居所にいる母のところへ、挨拶にいった。
やがて石神井川が飛鳥あすか山と王子台との間に活路をひらいて落ちるようになって、不忍池しのばずのいけの上は藍染あいぞめ川の細い流れとなり、不忍池の下は暗渠あんきょにされてしまって
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それでつて庭の中にひざまずいている時に、雨水がたまつて腰につきました。その臣は紅い紐をつけた藍染あいぞめの衣を著ておりましたから、水潦みずたまりが赤い紐に觸れて青が皆赤くなりました。
だが、お通が今いる所は、漁師りょうしの家ではなく、そこらの松の枝や干し竿ざおに、かけ渡してある藍染あいぞめの布を見ても直ぐ知れるように、飾磨染しかまぞめと世間でよぶ紺染こんぞめを業とする小さい染屋の庭にいるのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
運ぶ草鞋わらじ、いざ峠にかかる一息つくため、ここに麓路ふもとじさしはさんで、竹の橋の出外ではずれに、四五軒の茶店があって、どこも異らぬ茶染ちゃぞめ藍染あいぞめ講中手拭こうじゅうてぬぐいの軒にひらひらとある蔭から、東海道の宿々のように
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藍染あいぞめ単衣ひとえを着、そのうえに派手な、たづな染の羽折はおりを重ねていたが、……絹張りの行燈あんどんの光りに照らしだされたその姿は、下町ふうのいきにくだけた感じで、孝之助はちょっと戸惑いをした。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こんがらとせいたかは親分乾分三人を荼毘だびに付して遺骨を抱えて江戸へ帰り、その四十九日の夜に、浅草藍染あいぞめ川の笊組へ仕返しの斬り込みを試みようと、密かに用意しているところへ、先を越して
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)