茶道さどう)” の例文
茶道さどうはなるべく自己の意匠いしょうによりて新方式を作らざるべからず。その新方式といへども二度用ゐれば陳腐につる事あるべし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
出雲松平家の茶道さどうに、岸玄知げんちといふ坊主が居た。ある時、松江の市街まちはづれをぶらついてゐると、きたなしやうの垣根に花を持つた梅の樹が目についた。
しかしこと生花いけばな茶道さどうによって教育され、和歌や昔物語によって、物のあわれの風雅ふうがを知ってた彼の妻は、良人と共に、その楽しみを別ち味わうことができた。
茶道さどうもとめで、茶礼の器物がその重要な品目であった。人々はこの頃のものを「白薩摩」と呼ぶ。だが更に降って寛政に至り、その白陶は錦襴の絵附を受け、「絵薩摩」へと進んだ。
苗代川の黒物 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
すべて、野暮やぼッたい人間を軽蔑けいべつするクセはあるが洗練された文化人ごのみの父としては仕方がない。その特性は、出入の茶道さどうの師でも、植木屋でも、魚屋までが、より知っている所だ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奈良は常子の悪口通り引っ込み思案が勝っていて活動的でない所為せいか、茶の湯がこゝでみなもとを発しました。利休の先生が紹鴎しょうおう、紹鴎の先生が珠光しゅこう、その珠光が当地で茶道さどうを開いたのでございます。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
日本の茶道さどうの基本趣味や、芭蕉俳句のいわゆる風流やが、すべてこけやさびやの風情を愛し、湿気によって生ずる特殊な雅趣を、生活の中にまで浸潤させて芸術しているのは
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
いやいや、まったく茶道さどうもなにもわきまえはいたさんが……どうにも、これはこころよい音でござる。久しい長陣に、雄たけびや、馬のいななきのみ聞いていたせいか、甚だ、快いかぎりでござる。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)