茶化ちゃか)” の例文
友人は茶化ちゃかしかけて来たが、私はこんなたしかな証拠のあるのに、来ていなかったと云うのが不思議であるから、友人に調子をあわせることができなかった。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ああいえば、こうと、あなた様のお口前くちまえは、いつも私を、茶化ちゃかしてばかりおしまいなさいます。寧子は、世間の女子おなごのような、嫉妬しっとでいうのではございません」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半ば茶化ちゃかしたような調子で答えたが、それがゆとりのある茶化し方ではなく、むしろきょをつかれて、どぎまぎした醜態しゅうたいをかくすための苦しい方便でしかなかったことは
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
……曠古こうこの大事業……空前の強敵……絶後の怪事件……そんなものに取巻かれて、嘘か本当か自殺の決心までさせられながら、それをかたぱしから茶化ちゃかしてしまっている。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
どうせ茶化ちゃかしているのだとは思いながら、自分の中なる人間がばかにされてるような気がして、ちょッと腹立たしくさえ思ったというようなシチュエイションにある主人公です
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「そんな茶化ちゃかしたって、誰が云うもんですか」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と野崎君が茶化ちゃかした。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大方北見ざかいに居る猟師の家を遠くから見たんだろう……なぞと茶化ちゃかしてしまう者も居る……といった塩梅あんばいで、サッパリ要領を得ないままに、噂ばかりがヤタラに高まって行った。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「決して、茶化ちゃかしてなんぞいるものですか。これが宅助の大まじめなところで」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる夜を——とかれは、弟の経盛を見ては、何か、茶化ちゃかしてやりたくなった。去った母が、残していった古机の横に、小さい灯皿ひざらけて、もっともらしく読書にばかりふけっているのだ。
茶化ちゃかさないで聞いておくれよ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)