若党わかとう)” の例文
旧字:若黨
今まで自分の名をいったこともありませんでしたが、わたしは治平といって、以前は奥州筋のある藩中に若党わかとう奉公をしていた者です。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四、五日すると、世話する者があって、下婢かひと同じ村の者という男が、中間奉公を望んで来た。また、一人の若党わかとうも、べつな方から召し抱えた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長崎の奉行所に廻勤かいきんに行くその若党わかとうに雇われてお供をした所が、和尚が馬鹿に長いころもか装束か妙なものを着て居て、奉行所の門で駕籠かごを出ると
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
三左衛門は主翁ていしゅ対手あいてにして碁を打つ気もしないので、江戸かられて来ている若党わかとうともに伴れて戸外そとへ遊びに出た。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あの喬之助の刃傷以来にんじょういらい、難を恐れて暇を取って行った召使いの中で、たったひとり残って家事の面倒を見ていてくれる若党わかとう忠助の声なので、園絵は安心をして
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
西衆にししゅう若党わかとうつるゝ草枕 洒堂しゃどう
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どこで聞いて来たか、小野家の若党わかとうも、典膳をつかまえて、こんな世間ばなしを、おかしそうに喋舌しゃべっていた。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其の時菊五郎はおいわ田宮たみや若党わかとう小平こへい、及び塩谷えんや浪人佐藤与茂七さとうよもしちの三役を勤めたが、お岩と小平の幽霊は陰惨を極めたもので、当時の人気に投じて七月の中旬から九月まで上演を続けた。
幽霊の衣裳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それから若党わかとう中間ちゅうげんどもを調べたが、かれらは新参の渡り者で、勿論なんにも知らなかった。次に女中共も調べられたが、かれらは初めてそんな話を聞かされて唯ふるえ上がるばかりであった。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「幸右衛門をお連れ遊ばしますか。それとも、お供はやはり若党わかとうの佐平を」
典膳はいつも心配そうに見較べながらついてあるいていた。彼も、弟子ではあるが、つねに荷持のお供であり、相弟子というよりは、草履取ぞうりとりか若党わかとうのごとく、その兄弟子にこき使われていた。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋敷仲間やしきちゅうげんでもなし、若党わかとうでもなし、ただの町人とも見えないのである。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、若党わかとう楠平くすへいは、枕から首をもたげて、耳を澄ました。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)