腰高こしだか)” の例文
呉服部は、腰高こしだか畳敷たたみじきで、普通のお客は、畳に腰かけて買い物をする。しかし反物などを買う客は、畳敷の上にあがり込む。
私の生まれた家 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
読みさしの黄表紙きびょうしを伏せると、勘弁勘次は突っかかるようにこう言って、開けっ放した海老床の腰高こしだか越しに戸外そとを覗いた。
ここの家でもこころよく承知して、勘次郎を庭口から奥へ案内した。百姓家とも付かず、店屋てんやとも付かないうちで、表には腰高こしだかの障子をしめてあった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家は腰高こしだか塗骨障子ぬりぼねしょうじを境にして居間と台所との二間のみなれど竹の濡縁ぬれえんそとにはささやかなる小庭ありとおぼしく、手水鉢ちょうずばちのほとりより竹の板目はめにはつたをからませ
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
家は腰高こしだか塗骨ぬりぼね障子を境にして居間いまと台所との二間ふたまのみなれど竹の濡縁ぬれえんそとにはささやかなる小庭ありと覚しく、手水鉢ちょうずばちのほとりより竹の板目はめにはつたをからませ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
石段を下り切つたぐ前に、眞ツ黒な古ぼけた家が、やみの中から影の如く見えてゐた。内部なかのラムプの光で黄色く浮き出した腰高こしだか障子しやうじには、『御支度所おしたくじよ大和屋やまとや』といふ文字もんじぼうとして讀まれた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
言いながら不審気いぶかしげな味噌松を先に、藤吉はがらりと勝手の腰高こしだかを開けた。