“腕(て)” の例文
私は説明を続けようとしてふと若い男の方を見ると、彼は自席のところに倚(よ)りかかって窓の外へ腕(て)をぶら垂(さ)げたまま、真蒼な顔をしていた。
「やい、みんな来い、こいつ何とか今、オツな名乗りをあげやがったぜ。おれたちを相手に抜く気らしい。ひとつお腕(て)のうちを見物としようじゃねえか」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
磯五は、腕(て)の苦痛を訴えて、うなっていた。しきりに、はっはっと息をして、草の中に顔をしずめた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
卓上電話に伸びた花房一郎の腕(て)へ、砕かれた大輪の花のように、身体(からだ)ごと縋り付いた花枝は
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
籃を腕(て)にして垣の中に
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「江戸へ帰ったら、生不動の縄張を譲って、一方の親分株を持たせるから、一つ俺たちに腕(て)を貸してくんねえか」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はその勘定を支払って、別に四銭のチップを女中にくれて、それから盲に腕(て)を貸した。
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
おみつが庇(かば)おうとする。おみつを打とうと藤吉が腕(て)を振り上げると
「ははは。しぶとい自慢よの。——どれほどな腕(て)なみになったか、いずれみてやるぞ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これで見ると津賀閑山、いっぱしの腕(て)のきく小悪党らしい。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)