腕木うでぎ)” の例文
枯れ草の生えた崩れ築土ついじと、腕木うでぎも傾いた怪しげな屋敷門とが、眼のまえに来ていた。清盛は、わが家と気づくと、ぞっとした。
無論腕木うでぎの支柱があり、黒鉄の上下こうが横斜めに構えてはいた。その把手ハンドルを菜っ葉服の一人が両手でしっかと引き降しにおさえた刹那せつなである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
直径二尺から三尺、高さ三十尺から四十尺の巨柱は、複雑な腕木うでぎの網状細工によって、斜めの瓦屋根かわらやねの重みにうなっている巨大なはりをささえていた。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
外へ出た腕木うでぎが折れていた。それを修理すると、彼は一つ舟をもつことになる。希望が一つふえた。そのあたりで引返すことにして、また元の場所へもどった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それからしばらくたって、ふと私は川のむこぎしを見ました。せいの高い二本のでんしんばしらが、たがいによりかかるようにして一本の腕木うでぎでつらねられてありました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
欄間の飾りより天井板まで美を尽してしかも俗ならぬやうに、家はくさびを打ちて動かぬやうに建てたらんが如く、天保は床脇とこわきの柱だけ丸木を用ゐ、無理に丸窓一つを穿うが手水鉢ちょうずばち腕木うでぎも自然木を用ゐ
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なんともえずさびしい気がして、ぼんやりそっちを見ていましたら、こうの河岸かわぎしに二本の電信でんしんばしらが、ちょうど両方りょうほうからうでを組んだように赤い腕木うでぎをつらねて立っていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
踏切の腕木うでぎがあがったあとは妹を背負った怪少年の姿はもう小さくなっていた。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
利休風りきゅうふうかやぶき門で、腕木うでぎには蔓草つるくさが這い、垣のうちには、竹林が煙っていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとき意地わるく、踏切の腕木うでぎが下がった。そしてじゃんじゃんベルが鳴りだした。急行電車がやってきたのだ。正太が踏切のところまでかけつけたときは、もうどうにもならなかった。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
などて腕木うでぎをおろすべき
などて腕木うでぎをおろすべき
月夜のでんしんばしら (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)