ゆるやか)” の例文
舟は大概右岸の浅草に沿うてそのを操っているであろう。これは浅草あさくさの岸一帯が浅瀬になっていて上汐の流が幾分かゆるやかであるからだ。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
目は地上にそゝがるゝことしばらくなりき、アヌンチヤタは忽ち右手めてを擧げて、ゆるやかにそのぬかを撫でたり。
上るに従って、偃松小さくなり、傾斜ゆるやかなる処に至りて、低く地にす。その上を踏みて行くを得べし。うれしや、偃松を踏みて行くを得るようになれば、頂上は遠からざる也。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
満枝はにはか煙管きせるもとめて、さてかたはらに人無きごとゆるやかけふりを吹きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人通ひとどおりは全くない。空気は乾いてゆるやかに凉しく動いている。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)