のろ)” の例文
馬には、音楽が分るとかいうが、いかにも笛の音が分るように、馬上の女がふく横笛に聞きれながら、のたり、のたりと、のろい脚を運んで来るのだった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これから百々村どう/\むらへ出まして、与久村よくむらから保泉村ほずみむらへかゝりますと、駕籠より馬の方が余程よっぽどおくれましたから、心はけど馬はのろく、あとより来る男は遅く、姿は見えません。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こうしておよそ今の時間にして四時間余りも経った頃、駕籠の歩みがのろくなった。そうして足音の響き工合でどうやらこの辺が郊外らしく専斎の心に感じられた。と、にわかに駕籠が止まった。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしたちまちにして一トあしは一ト歩よりおそくなって、やがて立止まったかと見えるばかりにのろく緩くなったあげく、うっかりとして脱石ぬけいし爪端つまさき踏掛ふんがけけたので、ずるりとすべる、よろよろッと踉蹌よろけ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「あののろい人はなぜ飛行機へ乗った。彼はなぜ宙返りを打った」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)