絵草紙屋えぞうしや)” の例文
旧字:繪草紙屋
が、いまわたしが昔ながら(わたしにとってはそうである)の「仲見世」を通って感じることは絵草紙屋えぞうしやのすくなくなったことである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
大方玩具屋おもちゃやですが、絵草紙屋えぞうしやなどもありますし、簪屋かんざしやも混っています。絵草紙は美しい三枚続きが、割り竹にはさんで掛け並べてありました。西南戦争などの絵もあったかと思います。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
三枚つづき五枚つづき、似顔絵のうまい絵師のが絵草紙屋えぞうしやの店前にさがると、何町のどこでは自来也じらいやが出来たとか、どこでは和唐内わとうない紅流べにながしだとか、気の早い涼台すずみだいのはなしの種になった。
ず一番先に四谷よツや金物商かなものやへ参りましたが一年程居りまして駈出かけだしました、それから新橋しんばし鍜冶屋かじやへ参り、三つき程過ぎて駈出し、又仲通なかどおりの絵草紙屋えぞうしやへ参りましたが、十で駈出しました
かの西南戦役せんえきは、わたしの幼い頃のことで何んにも知らないが、絵草紙屋えぞうしやの店にいろいろの戦争絵のあったのを記憶している。いずれも三枚続きで、五銭くらい。また、そのころ流行はやった唄に
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
当時売女の相場、新吉原なかちょう角海老かどえび筋向すじむかいあたりにありし絵草紙屋えぞうしやにて売る活版の細見記を見ても、大見世おおみせの女の揚代あげだい金壱円弐拾銭にて、これより以上のものはなかりし。以て一般を推すべし。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なにがしとかいう絵草紙屋えぞうしやが、一枚絵にしたいと云って交渉に来たこともあるそうで、これはもちろん謝絶したが、そのくらいきれいだった代りに躯が弱く、医者のでいりの絶えることがなかった。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これより先、裸美の画坊間ぼうかん絵草紙屋えぞうしやに一ツさがり、遂に沢山さがる。道徳家なげき、美術家あきれ、兵士喜んで買い、書生ソッと買う。しかしてその由来を『国民の友』の初刷に帰する者あり。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)