紅色こうしょく)” の例文
暗緑色の松と、晩霞ばんかの濃い紫と、この夕日の空の紅色こうしょくとは独り東京のみならず日本の風土特有の色彩である。
くきの上部に分枝ぶんしし、さらに小梗しょうこうに分かれて紅色こうしょく美花びかれているが、その花には雄花ゆうか雌花しかとが雑居ざっきょして咲いており、雄花ゆうか花中かちゅうに黄色のやくを球形に集めた雄蕊ゆうずいがあり
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
辛卯は天保二年で、抽斎が二十七歳の時である。しかし現存している一巻には、この国文八枚が紅色こうしょくの半紙に写してあって、その前に白紙に写した漢文の草稿二十九枚が合綴ごうてつしてある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
青色せいしょくだの紅色こうしょくだの又は紫などを愛するものは之に中し、や赤を好む者は子供か又は劣等なる地位に居るものと言うて良い、て是から猫は如何なる染色を好むかに就て述べるのであるが
猫と色の嗜好 (新字新仮名) / 石田孫太郎(著)
五年に至りその画風はますます繊細となり再び純粋の紅色こうしょくを用ゆると共にまた軟き緑色りょくしょくを施すを常とせり。婦女の髪は頂において幅広く眼は一直線をなして直径の如くに中央を横切りたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三年(西暦一七四二年あるひは三年)奥村政信の門人西村重長にしむらしげなが、一枚の板木はんぎにて緑色りょくしょく及び紅色こうしょく二度摺の法を案出するや、浮世絵はここに始めて真正なる彩色板刻の技術に到達するを得たりしなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また紅色こうしょくの上に藍色あいいろ(青)を摺りて紫を得、以て三色摺となしぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)